なぜ引っ越し時に家具トラブルが多発するのか
引っ越しは、人生の中でも特にモノが動く大イベントだ。 しかし、その忙しさの裏側で家具の破損・傷トラブルが後を絶たない。
国民生活センターのデータによると、引っ越しに関するトラブル相談は年間2,000件以上にのぼる。 その中でも「家具・家電の破損」は最も多い苦情のひとつだ。
なぜトラブルは起きるのか。主な原因は次の3つに集約される。
準備不足・搬出ルートの未確認・保険内容の無理解
これらは、事前の行動ひとつで防げるリスクでもある。 つまり、知っているか知らないかで結果が大きく変わる。
大型家具ほど破損リスクが高い理由
ソファ・食器棚・ベッドフレームなど大型家具は、搬出・搬入の難易度が高い。 特に、玄関やエレベーターの幅が限られる都市部のマンションでは顕著だ。
たとえば、大阪市内の築年数が古いマンションでは、エレベーターの幅が70cm未満のケースも珍しくない。 その結果、無理な角度での搬入を強いられ、家具の角が欠けたり、廊下の壁に深い傷がついたりする。
また、転勤や入学などの繁忙期は作業員の人数も限られがちだ。 一人ひとりの作業精度が下がれば、当然トラブルの確率は上がる。
こうした背景を頭に入れておくことが、リスク回避の第一歩となる。
引っ越し前に必ずやるべき「3つの準備」
引っ越しのトラブルは、当日ではなく準備段階で大半が防げる。 以下の3点を、荷造り開始前に必ず実施しよう。
① 全家具をスマホで写真撮影する

引っ越し前日までに、すべての家具をスマホで撮影しておく。 特に注目すべき箇所は「角・脚・塗装面・ガラス部分」だ。
撮影のポイントは次のとおり。
- 複数の角度から撮る
- 既存の傷も明確に写し込む
- 撮影日時が記録されるよう設定を確認する
この写真が、万一の補償交渉において決定的な証拠になる。 「引っ越し前からあった傷か、引っ越し中についた傷か」を証明できるのは写真だけだ。
② 搬出ルートを事前に採寸・確認する
「玄関を通らなかった」「階段の角を曲がれなかった」という事態は、採寸で防げる。 玄関の幅・高さ、廊下の折れ曲がり、エレベーターの内寸を必ず計測しよう。
採寸した数値は、見積もり時に業者へ必ず共有する。 大型家具の分解・再組立が必要かどうかを、事前に業者と合意しておくことが重要だ。
また、引っ越し先(新居)の搬入口も忘れずに確認する。 搬出はできても搬入できないケースが、引っ越しトラブルの中でも特に多い。
③ 引っ越し保険の内容を必ず確認する
多くの引っ越し業者は、基本プランに補償を含んでいる。 しかし、補償上限が10万円程度に設定されているケースが大半だ。
アンティーク家具・ブランド家具・ピアノなど高額なものは、基本補償では不足する場合がある。 そのような場合は「動産総合保険」や業者の特約オプションを検討しよう。
確認すべき保険の要点は以下のとおり。
- 補償対象の品目(家電・家具・美術品など)
- 補償上限額と免責金額の有無
- 申請期限(当日中か、数日以内か)
知らずにサインすると、後で「補償対象外だった」と泣き寝入りになりかねない。
引っ越し当日のリスクを下げる行動チェックリスト
準備が整っても、当日の対応次第でトラブルは起きる。 次のチェックリストを参考に、当日を乗り切ろう。
搬出・搬入時に必ず実践すること
搬出前(旧居)
- 作業員と一緒に家具の状態を再確認する
- 「傷つきやすい」「分解不可」などを口頭で明確に伝える
- 床・壁への養生シート敷設を業者に依頼する
- ネジや取っ手などの小部品は別袋に保管する
搬入後(新居)
- 全家具の状態を搬入直後に確認する
- 新たな傷・破損がないか写真撮影する
- 退去前の旧居も、壁・床の傷を記録しておく
たった一声と一枚の写真が、補償交渉の流れを決定づける。 慌ただしい当日だからこそ、この確認だけは省略しない。
子ども・ペットがいる場合の追加注意点
作業中は大人も注意が散漫になりがちだ。 子どもやペットは、できれば別室や親族宅で預かってもらうのが理想的だ。
子どもが作業エリアに入ると、作業員の集中が乱れ、事故や破損リスクが高まる。 安全確保と家具保護は、セットで考えるべき問題だ。
家具が壊れてしまったら?補償申請の正しい流れ
万全の準備をしても、トラブルが起きることはある。 そのときに慌てないため、補償申請の流れを把握しておこう。
ステップ1|当日中に引っ越し業者へ連絡する

破損を発見したら、その日のうちに引っ越し業者へ連絡する。 翌日以降になると、「引っ越し後に自分でつけた傷では?」と対応を拒否されるリスクがある。
電話だけでなく、メールやアプリでの連絡も記録として残しておこう。 口頭のみのやりとりは、後にトラブルの原因になりやすい。
ステップ2|破損状況を写真・文書で報告する
連絡後は、破損箇所を複数の角度から撮影し、業者へ提出する。 「搬入前の写真」と「破損発見後の写真」を並べると説得力が増す。
また、破損の状況を文章でも記録しておく。 「何時頃・どの部屋で・どのような破損が確認されたか」を具体的に記す。
ステップ3|見積・修理・補償額の確定
業者が修理業者に見積を依頼し、その金額をもとに補償額が決まる。
たとえば、神戸市内のCさんは引っ越し後に食器棚の扉にヒビが入っているのを発見。 搬入前の写真と当日の破損写真を照合した結果、修理費4万円が全額補償された。
このケースのように、写真という証拠が補償の可否を決定した。 記録の有無が、結果を大きく左右する実例だ。
ステップ4|書類確認・署名・補償金の受け取り
補償内容に合意したら、書類にサインして手続き完了となる。 補償金の振込までの目安は1〜3週間程度が一般的だ。
進捗が遅い場合は、担当部署へ積極的に確認を入れよう。 受け身のままでは、手続きが後回しにされるケースもある。
トラブルを減らす「信頼できる業者」の見極め方
引っ越しトラブルの多くは、業者選びの段階で回避できる。 見積もり時に、次の3点を必ず確認しよう。
業者選びで見るべき3つのポイント
① 保険・補償内容が明示されているか
補償上限・対象品目・申請方法が、書面で明確に提示されている業者を選ぶ。 口頭だけの説明は要注意だ。
② 養生・梱包の方法が具体的か
「養生はどのように行いますか?」と質問してみよう。 「標準的に行います」などの曖昧な回答より、「階段・廊下・玄関にシートを敷きます」と具体的に答える業者のほうが信頼できる。
③ 口コミ・評判で家具対応の評価が高いか
Googleマップやレビューサイトで、「家具の扱いが丁寧」「破損ゼロだった」などの評価を確認しよう。 大阪・兵庫エリアでは、家具の分解・再組立まで対応する業者も増えており、大型家具を持つ世帯には特に心強い選択肢となる。
まとめ
引っ越しでの家具破損・傷・補償トラブルは、誰にでも起こり得るリスクだ。 しかし、正しい準備と知識があれば、ほとんどのトラブルは防ぐことができる。
今回の記事で伝えた要点を、最後に整理する。
- 引っ越し前:写真記録・搬出ルートの採寸・保険内容の確認
- 引っ越し当日:作業員への口頭説明・養生の依頼・搬入後の状態確認
- トラブル発生時:当日中の連絡・写真証拠の提出・補償申請の流れを把握
この3段階の対策を実践するだけで、引っ越し後の後悔を大幅に減らせる。
新生活のスタートは、笑顔で迎えたい。 そのための小さな準備が、大きな安心に変わる。 ぜひ今日から一つひとつ、実行に移してほしい。


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